巻十五・三七二四
君が行く 道のながてを 繰り畳ね 焼き亡ぼさむ 天の火もがも
狭野茅上娘子
【あなたがいらっしゃる道の、長い道のりをたぐり寄せて、
それを畳んで焼き尽くしてしまうような天の火がほしい。】
とがめられるような恋をしたせいでしょうか。中臣宅守(なかとみのやかもり)は、流罪の身となってしまいます。この歌は、宅守が越前へ送られてしまう前に、恋の相手 狭野茅上娘子(さののちがみのをとめ)が詠んだ歌です。
中国の書物には「天の火を災いという」と記されています。災いが起こるのは、天が怒っているからだと、とらえたのでしょうか。
愛しあう二人の仲が、なぜ引き裂かれなければならなかったのか。理由は、明らかになっていません。宮中に仕える者として、結ばれてはいけない二人だったのかもしれません。道のりを焼き滅ぼしてしまうような天の火、災いがあればいい。そうすれば、あなたを失わなくて済むのに。愛する人よ、行かないでという強い想い。この歌は、万葉の頃ならではの情熱の表し方、激しい恋の叫びなのです。
「万葉集ココロ・ニ・マド・ヲ」
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