真夜中を待っていたように牡丹雪がのろのろ降り下り
控え目な雪化粧の町は慎ましく朝を待っている
通りには二人の足跡 それを拾うようにして
逃げる冬のあとを追って屋上まで来た僕らは
飛べる飛べないの言い争いを夏までやった
手に花火 川縁転がり やたら秘密を作りたがり
ここらじゃ一等のっぽのあの古ビルへ駆けのぼると
管理人らしき男が一人 屋上の手摺にもたれ遠くへ目をこらしていた
海を望むかのように
逃げる夏のあとを追って岬まで来た僕らは
飛べる飛べないの言い争いを冬までやった
電波塔はマッチ棒 街は銀河みたいだろ
だってさ僕らは飛べると答えるしかなかったんだ
何年かして夢の跡に咲く花が綺麗かどうかの言い争いを
してしまうんだろうな
僕らは飛べる飛べないの言い争いを死ぬまでやんのかよ
青春は極彩色で不朽である。 内田秋
撮影: 井上理緒奈