「糸」は元来、天理教の現真柱・中山善司の結婚を祝して1992年に作られた楽曲であった。中島はほどなくしてこのパワー・バラードをレコーディングし、通算20作目となるスタジオ録音作『EAST ASIA』を締めくくるナンバーとして同年の10月に公式に発表した。このアルバムに収録された曲のベーシック・トラックは全般的に日本国内で録音されたものだが、のちにコーラスとストリングスがハリウッドのキャピトル・スタジオ(英語版)で追加されている。この曲のコーラスも海外で録音されており、『EAST ASIA』の表題曲の弦編曲を担当したデヴィッド・キャンベルの配偶者だったレイヴァン・ケーン、1970年代からセッション・シンガーとして活動しているザ・ウォーターズによって歌われている。
この曲は2004年に、Mr. Childrenのフロントマン櫻井和寿とプロデューサーの小林武史が結成したチャリティ・プロジェクト、Bank Bandのカヴァー・アルバム『沿志奏逢』でとりあげられた。彼等のカヴァーはシングルとしてリリースされなかったものの、翌年に住友生命のコマーシャルに使用され、これを機に楽曲そのものの存在が世間一般により広く認知されるようになった。2005年以降、のべ20組以上のアーティストによって相次いでカヴァー・ヴァージョンが商品化され、中島によるオリジナルも複数のテレビドラマやコマーシャル、イベントなどで幾度に渡って使用されている。
『命の別名/糸』(いのちのべつめい/いと)は、日本のシンガーソングライター、中島みゆきの35枚目の両A面シングルである。1998年2月4日に発売された。
シングルCDに収録された2曲は、いずれもTBS系テレビドラマ『聖者の行進』の主題歌に起用された。当初はすでに発表済みだった「糸」が起用され、シングルがリリースされた5話以降は新曲の「命の別名」に差し替えられた。ドラマの終盤では「糸」がふたたびテーマ曲となっている。
『家なき子』のために書き下ろされた1994年の「空と君のあいだに」、ならびにその続編に起用された翌年の「旅人のうた」がチャートの首位を獲得し、どちらも100万枚を超えるセールスを記録したのに対し、同じく野島伸司の脚本によるドラマのテーマ曲であるこのシングルはトップ10入りを逃し、商業的な成果は前2作には遥かに及ばなかった。それでも、このシングルは20万枚以上を出荷し、日本レコード協会によってゴールドディスクに認定されている。
糸
『聖者の行進』主題歌 (第1 -- 4、11 -- 12話) (1998年)
『ありがとう!チャンピイ』のテーマ曲(2008年9月13日にフジテレビで放送されたスペシャルドラマ)
「七十七銀行」CMソング(2009年)
「関西電力」CMソング(2010年)
「サントリー・BOSSコーヒーレインボーマウンテン 高見盛ver.」CMソング(2013年)