彼女はきっともう戻らない
猥雑な夜の喧騒
赤や黄色 青白い明かりが冬の星座みたいだった
灰皿でくすぶっているのは 彼女の吸い殻と
しみったれた感傷
思い出なんて消えてしまえ
校庭の隅っこで 体育座りしてぼんやりと見てる
野球部のフライを眺めるように なんとなく未来を見てる
いつかは変わってしまうかな 大好きなあの子の笑顔とか
バカだったあいつらも 大人になってしまうかな
今まさにヒットを放った 四番バッターのあいつは
一年後の冬に 飲酒運転で事故って死んだ
その時 誰もがあまりの空っぽに立ち尽くしていた
母さんが汚れたバットを抱きながら泣き叫んでいた
僕が憧れた彼女は 男に逃げられたストレスで
過食気味になったと笑った こけた頬を引き攣らせ
右手には悪趣味な指輪と かさぶたの吐きだこ
諦めるのは簡単と 珈琲をすすった
夜の街を彷徨いながら 昔話に夢中になってた
そんな事もあったねと 彼女は笑いながら泣いた
それでも それでも 頑張れなんて言えなかった
さよなら さよなら せめて笑いながら手を振った
少しずつ 諦めることばっかり 上手になってた
我慢することが 人の為になると思っていた
記憶の隅に積み重ねた 無謀な夢と悔し涙
押し殺したホントの気持ちが 胸倉に掴み掛かる
「どうしてここに居るんだよ 今すぐに逃げ出せよ
望んだ様に生きられないなら 死んでんのと同じだ」
そうだ 僕も君ももう一度新しく生まれ変わるよ
傷ついて笑うのは 金輪際もうやめにしよう
凍える夜に一人だから 僕らは間違ったこともやった
心無い人が多すぎて 僕らは無駄に強くなった
それでも それでも 間違いじゃないと信じたいな
さよなら さよなら 強がりは夜の闇に溶けた
校庭の隅っこで 体育座りしてぼんやり見てる
野球部のフライを眺めるように なんとなく未来を見てる
僕は変わってしまったかな 時々不安で怖くなるよ
ホームインした四番バッターがはしゃいで笑う声
それぞれの不安を抱えて それぞれ未来へ歩んでいった
それぞれが痛みを抱いて それぞれ今日に立ち尽くした
なんだろう なんだろう 涙が溢れてしょうがないよ
さよなら さよなら 思い出なんて消えてしまえ
どうせ明日が続くなら 思い出なんてなんて要らないよ
この脚を重くするだけの感傷なら ドブ川に蹴り捨てた
それでも それでも 涙が枯れることは無いから
さよなら さよなら せめて僕は笑いながら泣いた