シバの女王　レーモン・ルフェーブル La Reine de Saba

シバ（フランス語ではサバ）とは旧約聖書に出てくるアラビア半島（or北アフリカ）の国ですが，聖書以外には記述が残されておらず，真偽のほどは不明です．フランスの歌手ミシェル・ローランの原曲（1967）では，「君は僕のシバの女王，どうか戻って君の国を築いておくれ．．．」と歌って，愛する女性をシバの女王になぞらえています．

　"シバの女王"で思い浮かぶ女性は，オーストリア帝国の美貌の王妃エリーザベトです．皇帝のフランツ・ヨーゼフ１世は謹厳実直な人柄でよく帝国を治めたのに対し，エリーザベトは皇后としての義務や職務を果たさずに，革命詩人ハイネに心酔して君主制に反感を抱いていたとも伝えられています．王宮を留守にすることの多かったため彼女の振る舞いを批判する人もいたようですが，たびたび訪れたハンガリーの人々からかなり慕われていたそうですので，人間的にはしっかりしていたのではないでしょうか。内面的で夢見がちな性格から，王室の生活に馴染めなかっただけのように思われます．現在のウイーンでは，街角や土産物屋，地下鉄，ホテルなど，至る所で彼女の肖像画を目にすることから，断トツの一番人気であることがわかります．世界中から多くの観光客が訪れるノイ・シュバンシュタイン城を築いた「狂人」ルードｳﾞイッヒ２世（バイエルン王）はエリーザベトの従兄の息子であり，良き友人でもあったようです．